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ふー…っと、誰にも気づかれないような静かな息を吐く。
もう、全集中でもしてないと、自分を保てるか分からない。
修行だ…。
これも、修行だ、匡!
「ねーまだー?」
突然、右背後から小さな代弁者の声がした。
「しー。もうちょっとだから、静かにしてて…」
今じゃさほど交流も無い、年の離れた従兄の子供だった。
慌てて宥めてる嫁さんはなかなかの美人だ。
「ねー!もうちょっとってどれくらいー?」
段々と子供の声も遠慮が無くなってきた。
分かる、分かるぞ。
俺はお前と同じ気持ちだ。
早く終われ早く終われ早く終われ…。
何度聞こえてくるお経に被せて念じたことか!
「しー。もうちょっと。もうちょっと頑張ろう?」
「もうちょっとってどれくらいってばー!」
母親の説得も確かにいまいちで、子供の声が更に大きくなった。
ちらりと白い目で見る他の親族は、我関せずだ。
「えーとね…。あと…――5分くらいだから…ね?」
「あとごふん?あとごふんって、みじかい?」
「うんうん、短いよ。あと5分」
「あとごふん!あとごふん!」
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