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ああ、あと5分かぁ…。
それくらいなら、俺も耐えられるかもしれない…。
名も知らぬ人妻の囁きが俺に希望をもたらした。
たとえ、それが子供を宥めるだけに咄嗟に出たでまかせでもいい。
今の俺には天使のお告げだ。
そしてお告げが的中したかの様に、お経の雰囲気が変わった。
お坊さんが数珠を擦り合わせながら、ブツブツと独り言の様に唱えている。
これは、もうそろそろ終わりの合図だ!
伊達に子供の頃から法事だ墓参りだと嫌々ながら参列してきたわけじゃない。
やった!俺は耐えた!持ちこたえた…!
心地よい安堵感が全身を駆け巡る。
だが…――
「はい、どうもお疲れ様でございました。こうして皆様がお集まりになり、無事一周忌が行われたこと、きっと先生も喜んでいらっしゃることと思います。さて――」
だあぁ~~!!
そうだった。
お経だけで済むわけではなかった。
お坊さんのありがたーい話、が続くんだった…。
しかもこの坊さん、中学校教諭だったじいちゃんの教え子ときてる。
ちょっとした思い出エピソードも織り交ぜて、話は更に膨らむこと間違いなしだ…。
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