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「グオォーーーン」
瓦礫の中から現れた六つ目の魔獣は、グラウンドで怯えている生徒達を見つけると、六つの目に当たる部分から紫色の光を放ちながら近づいていく。紫色の光を浴びた生徒たちは、突然意識をうしなったように頭を垂れながら、フラフラと魔獣に引き寄せられていく。
ワタシは、淡い光を放出しながら魔獣の邪魔をするため目の前に向かって飛んでいく。
スカートで空を飛ぶと下半身がスース―するじゃん、だわよ。魔法少女達って冷え症対策はしてないのかしら? だわよ。これは絶対に毛糸のパンツが必要だぜ、だわよ……。とか変な事を考えながら、魔獣の目に対して魔法のスティックを振りかざして魔法つぶてを発射する。
魔獣は右手でそのつぶてを弾き飛ばしながら、左手でアタイの体を掴もうとして手を振り回す。アタイは体をひねって魔獣の左手をかわしつつ魔獣の後ろに回り込む。
「ピコーン、ピコーン」
やばい、大きな胸が弾けないように押さえてくれている胸元のペンタンドが不気味な音を立てながら光始めた、だわよ。これはもしかしたらお約束のあれかな? だわよ。
「そうだよ、そのペンダントの点滅が消えたら、君の魔法少女としての能力は失われてしまい。女性のまま元に戻れないからね」
「おいおい、そんな重要な話聞いてないぞ、だわよ」
アタイは残っている魔法を全て右手と左手の指先に集めながら魔獣に向けて叫ぶ、だわよ。
「ファイナル・ファンタジー・ビームーーーー!、だわよー」
―― ピカッ! ――
まるで太陽が魔獣がいた場所からから登って来るように、ものすごい光が魔獣を包み込み、魔獣は断末魔の苦しをこちらに見せながら消えていく。その時の凄い爆風がワタシの短いスカートを巻き上げないように、ワタシはスカートのすそを必死に押さえる。
「ふー、やっつけたのかな? だわよ」
「うん、そうだね。初めてにしてはよくやったよ、陽介君。魔獣の呪いは全て君の胸のペンダントに吸収されたみたいだ。これで君も男の子に戻れるよ」
アタイの体の光は、魔獣をやっつけてグラウンドに降り立ったと同時に消えていった。そしてアタイの体は俺の体に戻っていた。
俺はこっそりと社会の窓の上から男の象徴をそっと触って、確かにそこにある事を確認した。帰って来てくれてありがとうな、我が息子……。
♪リーンゴーン、♪リーンゴーン
瓦礫と化した教室棟とは別の、崩壊を免れた特別教室棟から、試験終了の合図の鐘が鳴り響いている。
「やっと5分かよ……、でも俺の答案用紙残ってるのか? だわよ」
俺は男に戻れたが、女言葉のクセが消えなくなっちまったようだ、だわよ……。どうせこれから魔法少女として生きていくのだから、女言葉でもいいかな? だわよ。
了
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