七夕の日

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「なんで父さんも母さんも来ないかなぁ、ほんと僕の事どうでもいいよね。」 なんとなく口にした言葉は、俺が生まれてから仕事が忙しくなり、それを理由に毎年夏休みは必ずこうして北海道の父さんの実家に預ける両親に対しての不満だった。 そして俺っていう普段使うこの言葉遣いもばあちゃんとじいちゃんがいる手前、なんか猫かぶりから脱することができなくなっていた。 「毎年誕生日くらい側にいてあげてもいいのにね。でも二人とも涼輔のことどうでも良い訳ではないのよ。ただ、二人とも代わりがいるお仕事ではないから、涼輔もその辺は分かるでしょ?」 ばあちゃんは俺に優しくさとしてくれるけど、頭では理解してても心はやはり毎年のように誕生日をお祝いしてくれるのがじいちゃんとばあちゃんだけなのが寂しくて、すれ違いを起こしているのだ。 「タエ、そんな風に言わなくてもいいじゃないか。涼輔だってただ不満を口にしただけじゃろうし、大体あいつらが自分の子どもなのに涼輔に一度も直接お祝いをしていないのが原因なんだからな。涼輔が不満に思うのは当たり前のことだべ。」 「まあ、、、そうですね。涼輔ももう高校に入学したというのに。」 じいちゃんもばあちゃんも結局はいつも俺の味方だ。そして、今年都内の共学の有名私立高校に合格した俺は無事に高校生になったのだ。 そう考えると、15歳になるのだから15年間も両親に誕生日当日に直接祝われてないことになる。 まあでも当日には欠かさず配達でプレゼントとメッセージが届く。だからなんも不満には思わないようにしていたのかもしれないが、今年は不満に思ってしまった。 「ばあちゃん、じいちゃん、ありがとう。なんかふたりがそう言ってくれるだけで吹っ切れたよ。僕ふたりに祝ってもらえて幸せだよ。」 そうだ。例え父さんと母さんに不満を持っていてもこのふたりにそれを見せてはいけない。受験のときも不安定な心をいつも電話で聞いてくれていたのはふたりだった。迷惑や心配は二度とかけないと誓ったのだ。これは俺の胸に留めておこう。 「そうかい?それならばあちゃんはいいんだが…」 「涼輔、今日はもうゆっくりと風呂に浸かって洗い流しなさい。じいちゃん達は先に寝るべ。」 「おう、ありがとう!」 じいちゃんとばあちゃんは寝室へと向かっていった。
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