ティラミスの意味。知ってる?

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ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…… めっちゃ連打してる。 『今谷さーん』って呼んでる。気がしてきた。 ああ、すまん。鴨井…… 今度ちゃんと話すよ。 「ちっ。しゃーないなぁ。じゃキスして?」 「は!?」 「あ。ゴキブリ!」 そう言って個室のトイレを指さす。 驚いてそっちを見た瞬間に、 「ちゅっ」って僕のほっぺにキスをする。 自動の洗面台の水が反応して僕のお尻が!水が! 「うわ!」 「アハハ。かっわいいー」 って言いながら出て行く。 全く…… こんなん。 戻って平静でいる自信がないよ。 赤くなった僕の顔を鏡で見ながら、湿ったお尻に手を当てる。 ああ、濡れちゃってるよ。 それでも口元はずっと、にやけっぱなしなんだ。 「おいー。ずいぶん長いトイレだなー」 「ハハ……ちょっと……」 「頼んどいたぜ!ティラミス!ででん!」 「どわ!」 こ、これは、大皿のファミリーサイズ! 確か六人前!1800円! でかい。 「ちょっと!誰がファミリーサイズったよー」 「いやー。やっぱさ。田中の男気をここでいっちょ見てみたくてな。あはは」 「あはは。じゃねー!ったく」 ああ。こいつ。ほんとバカ。 何考えてんだか。 なんかこいつに後ろめたい気持ちにさせられてる僕が、損した気分だ。 うん、そうだ。 懺悔するのはもう少し後にしよう。 とりあえず目下の課題は、この皿いっぱいのティラミスを平らげることだ。くそう。 こうなったら食ってやるわ。 スプーン山盛りのティラミスを口いっぱいに頬張る。
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