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僕はいま「サイゼリヤ」に来てる。
もう、そのドアを開けて入った瞬間から、ちょっと頭が痛くなってきた。
「いらっしゃいませー。お客様は三名様でよろしいですか?」
鴨井は自信満々に(なにが彼をそうさせるのか謎なのだけれど)指を三本突き出して店員さんにドヤ顔してる。
「三名様ですね?あちらのお好きな席へどうぞー」
「さあ。行きますわよ、ザーボンさん。ドドリアさん」
ああ、終わった。
やめて、そのコピペネタ……
という僕の、この心境を誰か上手く表現してはくれまいか。
昼の講義を終わらせて、さてさて今日はどうしようか……などど暇そうにしている僕と寺島は悪友の鴨井に捕まり、半ば強引にお茶しようと連れてこられたファミレスはウチの近くの「サイゼリヤ」だった。
学生に優しいお手ごろ価格のイタリアン、僕もここの店は近所だけあってよく使ってる。
あ、いや……数ヶ月前まで。
だから久しぶりだ。
けど、なぜ大学から目と鼻の先にある駅近のファミレスでお茶しない。
わざわざ電車乗り継いで、ウチの方まで遠征して……
鴨井さんよ。お前さんのアパートは逆路線じゃないのか?
と、疑問が湧いていたのだけれど、それも彼の表情を見た瞬間、完全に理解した。
クソ暑いせいで弛んでる鴨井の顔が、より輪をかけて目尻と鼻の下がダルンダルンなのは、あの受付てくれた店員さんのせいなんだろう。
うんうん。
透けて見え見えのシースルーのスケスケスケベな顔が丸出しだな。
全く。
ああ、ダメだ。
完全に逝ってる。
うん。
パシン。
とりあえずそんな鴨井の頭をはたいて、席に促す。
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