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昼下がりの店内はアイドル中なのだから空席が目立ってて、選びたい放題。
一番奥の壁際に僕らは陣取った。
スマホゲームに夢中の寺島は全く興味なさげだ。隅っこに座ってメニューも見ずに「僕アイスコーヒー」と言う。
「おいおい寺島。ここはドリバだからセルフだぞ」
「そうなの?」
「そうだよ。寺島って、けっこう世間知らずだよな」
「ん〜。そ?」
そんな彼はスマホで『ドリバとは?』と入力している。
聞けや!
「ああもう。とりあえず鴨井、メニュー……」と言いかけた僕に、向かいの席からずいっ!と身を乗り出して暑苦しい顔を押し付けてくる。
やめてくれます?
「おい。見てくれたか?彼女の笑顔」
「は?」
「いま受付にいた。今谷さん」
「あ、ああ……見たけど」
こいつちっとも分かってないな。と言いたそうに「やれやれ、これだからきょうびの田中君は……」ってふんぞり返り、大きなため息つく。
なんだろう、イラッとする。
いや。鴨井。
きょうびのかもいとしかずよ。
皆まで言うな。
お前の言わんとすることは察しがついている。入学以来ずっとつるんでいるんじゃないか。
お前の好みのタイプなんて百も千も承知で、こっちはその話を避けてんの。
ハイハイ。どストレートなのは、うん。
わかるから。綺麗だよね。知ってる。
「この前、お前の家遊び行ったじゃん」
「うん」
「その帰りに入ったんよ。ここ」
興奮してる鴨井をよそにメニューを広げてどうするか……考える。
「したっけおるやんけ!天使が!」
唾飛ばすなや!
「お前はどこ出身なん?」
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