23人が本棚に入れています
本棚に追加
「ピンポーン」
女神を呼ぶ軽やかな音が、店内に鳴り響いた。
「どうしてもなのか?」
「ああ、どうしてもだ」
イタリアンのファミレス「サイゼーリヤン」で食事を終えた俺と親友のマコトは、いまだ二人がけの席に向かい合って座っていた。
「譲れねえよ」と俺。
「俺だって」とマコト。
俺は、正面に座っているマコトを見つめた。
お互い視線はそらさない。
しばらくして、マコトが席を立つ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
トイレに向かうマコトがその扉を開けるまで、顔を動かさず目で追って眺めていた。
ふう……。
やつは本気だ。
中学、高校、大学と同じ道をたどってきたマコトだ。あいつのことは他の誰よりも知っている。
あの眼差しをみれば、真剣な思いがひしひしと伝わってくる。
妥協しない。
諦めない。
逃さない。
説得するのは難しそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!