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なら、俺が譲る?
そんなことできるわけがない。
俺は首を大きく横に振って宙を見つめる。
はいそれと諦めるわけには行かなかった。
とはいえ、俺がマコトをわかっているように、俺の気持ちも考えも、マコトなら手に取るようにわかっているだろう。
さて、どうしたものか……。
考えていると、マコトが帰ってきた。
颯爽と座るヤツの表情に、一瞬だけ笑みが溢れたのを俺は見逃さなかった。
金曜日の午後。
あじさいが揺れる梅雨の半ば。
雨が続くこの季節も今日は晴れていて、店内は心地よく多くの客で賑わっている……はずだが、新型感染症対策の一貫として、20席ほどある座席数も2分の1に減らされていて、閑散としている。
「ピンポーン」
そうは言っても店内には数組のお客がいて、定期的にあの音が聞こえてくる。
……よし。
俺は意を決した。
「わりぃ。俺もちょっとトイレ行ってくる」
腕を組んで待つマコトを置いて、俺は足早にトイレへと向かった。
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