女神を呼ぶのは、俺だ。

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俺がトイレから戻ってくるなり、マコトが言った。 「なあ。話し合っても無駄だからさ、ここは一つ賭けで決着をつけようじゃないか?」 「賭け?」 俺はマコトに聞き返す。 「ああ。二人に公平に、運命に身を委ねようじゃないか」 「運命か……。いいだろう。でもどうやって」 マコトが店内の上の方にある黒色の四角い物体を指差した。 ピンポンを押せば、席番号が表示されウエイトレスがやってくる表示板だ。 「店内には何組の客がいる?」マコトが尋ねてきた。 俺は店内を見回した。入り口に一番近い俺達を先頭に、店の奥に向かって1ずつ席を跳ばして、1……2……3……6組の客が座っていた。 「俺たちを除いて6組だ」 「ああそうだ。で、俺たちの席の番号が13番」 体を横に倒しテーブルの横に打ち付けてある番号を見ると、確かに13番だった。 「確かに13番だ」 「さっきトイレに行くときに確認したんだが、ここから奥に向かって、番号が減っていく。つまり、隣の客が11番で、次が9番、次が7番……で、一番奥が1番」 「そうなんだ」 マコトが前のめりになって話しかけてくる。 「で、ここからが本題。ピンポンを押せば、あそこに席の番号が表示される。俺とお前、6組の客を順に3組選んで、3組の番号がさきに表示されたほうが女神を手にするってのはどうだ?」 俺はマコトの目を覗き込んだ。 挑戦的でいて、自信たっぷりな目。 既にその腕に運命の女神を抱いているかのように、勝ち誇った目。 ふざけるな。
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