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俺は燃え上がる想いを押し殺し、あくまでも平静を装った。
「いいだろう。神様に決めてもらうしかないな」
「ああ、公平にな」とマコト。
「ああ、公平にだ」と俺。
「じゃあ、お前から選んでいいよ。方法は俺が決めたんだしな」
マコトが背もたれに体を預けながら言った。
「いいのか」
「もちろんだ。それが公平ってもんだ」
「そうだな」
俺は、店内の6組の客を順を追って眺めた。
隣の席の11番には、30歳前後の母親と幼稚園児くらいの男の子が向かい合っていた。さっき店に入ってきたばかりで、まだメニューを見ながら二人であーでもないこーでもないと言い合っている。
次の9番には、腕まくりをした40代前後のサラリーマンがうちわを仰いでいた。机の上にある赤ワインのデキャンタは半分ほどになっている。
続く7番。就活生らしい若い女性が建物の柱を背に、本を夢中になって読んでいる。小皿のチョコレートケーキは半分が手つかずで、コップにあるアイスコーヒーらしきものもそれほど減っていない。
5番のテーブルでは、白髪に覆われた高齢の男性と女性が、食後の紅茶を楽しみながらにこやかに談笑している。
その次の3番のテーブルには、手元には開けたままのパソコンのほか、ノートやら法律の参考書が散らかっていた。狭くなったテーブルの上に両腕を枕にし、大学生と思しき男性がうたた寝をしているようだった。
そして一番奥、1番のテーブルにも高校数学の参考書と真っ白なノート、メロンソーダが二人分置いてある。
ちょうどカランコロンと音が響いて、店外から二人組の女子高生が戻ってきたところだった。
さて……。
俺は口に手の甲を当て考えた。
目の端には、俺を見つめるマコトがおぼろげに見える。
考えても無駄かもしれなかった。
「言っていいか?」と俺。
「ああ、どうぞ」とマコト。
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