23人が本棚に入れています
本棚に追加
そう思った俺は彼女が転んだ床を見つめた。
よく見てみると、床がところどころ滲んで不自然に盛り上がっていた……。
氷……?
俺はマコトの前に置いてあるプレートに目を向けた。
飲み終わったオレンジジュースのグラスに貯まっていたはずの、氷が……ない!
「てめえ」
俺は非難の目を向けた。
いくらなんでもこれはやりすぎだ。
「お前いくらなんでも手に入れたいからって、それはやりすぎだろ」
「……何が?」
マコトはうつむいたまま返事をしてきた。
「何がって。お前、グラスの溶けだした氷を、床にばらまいたな!」
ゆっくりとマコトが顔をあげる。
「証拠は?」
「は?」
「だから証拠は?」
「証拠って、あんなところにふつう氷水が放置されてるわけないだろ!」
「……いいがかりもよしたらどうかね」
ゆったりと、しかし力強い声。
その発する場所は、笑っていた。
ニヤリと笑っていた。
「公平とか言ってたくせに、イカサマやりやがって」
俺は誰しもが思う当然の言葉を投げつけたが、マコトはそれをさらりとかわした。
「イカサマはね、バレなきゃいいんですよ」
口どころか、目まで笑っている。
最初のコメントを投稿しよう!