女神を呼ぶのは、俺だ。

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「ピンポーン」 女神を呼ぶ軽やかな音が、店内に鳴り響いた。 「どうしてもなのか?」 「ああ、どうしてもだ」 イタリアンのファミレス「サイゼーリヤン」で食事を終えた俺と親友のマコトは、いまだ二人がけの席に向かい合って座っていた。 「譲れねえよ」と俺。 「俺だって」とマコト。 俺は、正面に座っているマコトを見つめた。 お互い視線はそらさない。 しばらくして、マコトが席を立つ。 「ちょっとトイレ行ってくる」 トイレに向かうマコトがその扉を開けるまで、顔を動かさず目で追って眺めていた。 ふう……。 やつは本気だ。 中学、高校、大学と同じ道をたどってきたマコトだ。あいつのことは他の誰よりも知っている。 あの眼差しをみれば、真剣な思いがひしひしと伝わってくる。 妥協しない。 諦めない。 逃さない。 説得するのは難しそうだった。
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