君だけのお殿様。

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「ピンポン! こんばんはー。とのチャンネルへようこそ!」 二十年後――現在。  僕は、持ち前のイケボを活かし、おすすめの彩ゼリー屋メニューを紹介するYouTuberへと成長していた。  チャンネル登録者数百二十五万人。総再生回数一億回突破。顔は出さずに声だけで老若男女を魅了する、新進気鋭のクリエイターとして注目されていた。 「あ、スパチャありがとうございますー。今回はですね! ミラノ風ピザ一万個食べ切れるまで帰れません、をやっていきたいと思いますー。それではスタート! う~ん、おいすぃー」  ――ふぅ、とカメラを切る。もちろん一万個なんて食べれる訳がない。十個食べたかも怪しいくらいだ。けど、コメント欄は予想通り賑わっていた。同時視聴数二万五千人。まずまずだな。  トイレに小一時間籠って用を足し、店員さんに貰った色紙にサインをしてから、店を出る。僕が撮影に使わせて貰った店舗は大体繁盛する。だから最近は、敢えて田舎にポツンと佇む彩ゼリー屋を好んで通っていた。こういう形で社会に貢献するのも悪くない。  タクシーを拾い、タワーマンションの最上階へと帰宅する。光り輝くカードキーをドアに(かざ)すと、愛しい声が奥の方から聞こえてきた。 「との、おかえりなさい。もう夕飯食べる?」  僕はお腹を摩ってゲップが出そうになるのを必死に堪えながら、爽やかな笑みを作る。 「あぁ、勿論さ」  君の手料理は別腹だからね。  さらりと付け足して、あの頃より更に美しくなった姫君の待つ部屋へと入っていった。 。・:+°。・:+°。・:+fin°。・:+°。・:+°
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