君だけのお殿様。

あの頃の僕は、君の奴隷だった。

「ピンポーン！ との、ピンポーン！」

二人にしか分からない合図で四つん這いになり、同じ背丈の君を乗せて部屋をぐるぐると回っても、全く反抗しないくらいには。

「勘弁してよ」

「まだまだー！ それゆけ！ 発進！」

無邪気に笑いながらペチペチと僕の頭を叩き、お馬さんごっこを永遠に強いる幼き君。僕の心を掴んで離さない、地上の天使。僕は周りが思っているほど賢くはなくて、ただただ君に惚れ込んで奴隷になることを喜んでいる、哀れなとの様だった。

それでも僕は、幸せだった。

他の誰よりも純粋だった。

君との一生を願い、叶えるまでは死んでやるもんかと、血反吐を吐くほどの苦労を重ね、のし上がることなんて屁でもなかったのだから。