踊れ!カップラーメン仮面!

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踊れ!カップラーメン仮面!

 カップラーメン好きにとって最も苦行と言うべきが、お湯を入れてから出来上がるまでの時間である。  ほんのり良い香りもしてくるしお腹も鳴るのに、出来上がるまで食べたくても絶対に食べられない。空腹と口の中に貯まる涎に耐えながら、ひたすらあと何分、あと何十秒と待たなければいけないのが僕は限りなく苦痛でたまらなかった。  特に、僕が一番大好きなカップラーメン、マルタカ屋の特盛シリーズ。これは総じて、お湯を入れてから五分も待たないといけないのである。  あと五分。  その時間を、少しでも楽に過ごすことはできないだろうか。  五分待たなくてはいけないのはどうしようもなくても、その長さを重く感じさせない方法さえあれば……。 「そうだ、これだ!」  僕はカノジョとのメールを見ていて思いついた。最近動画投稿サイト、ようちゅーべのダンス動画を見るのにハマっているという彼女。自分も、動画投稿をしてみるというのはどうだろう。  カップラーメンが出来上がるまでの五分間、ひたすらキレッキレに踊って時間を稼ぐ動画である。面白いかどうかはわからないが、動画がウケなくてもそれはそれ。運動すればダイエットにもなるし、五分間が少しでも短く感じられるのならそれで十分なのだから。  まずは、動画を撮影するための機材を購入。カメラ、それからパソコン。あと、いきなり顔出しする度胸はないので、顔や体型を隠せるような仮面と衣装も購入することにする。  そして出来上がったのがこのキャラクター、ダンシング・カップラーメン仮面!だ。  いやまあ、自分でもセンスないとは思うが。重い衣装を着て仮面をつけて踊れば、それもそれで体力を使うことだろう。ダンスの勉強なんかしたことないし、はっきり言って思いつくままアドリブダンスを繰り広げるだけだが、少しでも面白いと思ってもらえれば幸いだ。  金ピカのお面にへのへのもへじを書いただけの仮面。  某コスプレ衣装ショップで買った金ピカスーツに赤マントを身にまとい、僕は恥を捨ててカップラーメンの前に立った。お湯を入れると同時にタイマーと録画セット、いざダンシング! 「ひゃふいいいいいいいいいいいいいいい!」  ちなみに。  初日ではっちゃけすぎた僕は、いきなりマントでカップラーメンをひっかけてこぼし、さらに裾を踏んですってんころりんをし、最終的には筋肉痛で翌日動けなくなるという醜態を晒すことになる。  そのしょうもない動画が微妙にウケたのは、実に残念だとしか言い様がない。
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