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「この曲ね」
「うん」
「自分で作っておきながら、最近全然聞いてなかったの。正直、存在も忘れてた。……思い出したくなかったのかな。あの時の、下手でもいいから頑張ろうって思ってた自分が、きっと今の自分を笑ってる気がして。なんだか、申し訳ない気がしちゃって」
それはきっと、創作をする者ならば一度は通る道なのだろう。自信を持つことは、そうそう簡単なものではない。頑張りたいと願っても、頑張ろうと思っても。気づけば上ばかりを見て、自分は場違いではないのかと萎縮してしまう。悪目立ちして、叩かれることを恐れている。――本当は、相手が自分を恐れて叩いてきているだけかもしれないのに。
「ここで折れたら、ワカナを追い詰めたクソな人達を喜ばせるだけだよ。何より……自分で言ってたこと、忘れないで。楽しいって気持ちが一番大事。自分に嘘だけはつきたくない……そうでしょ?」
間奏が終わる。
私はもう一度、マイクを握り直した。
“才能も自信もあるわけがないけど
誰よりも自分に嘘だけはつきたくない
HEY!”
――笑われてる気がするなら、いっそこっちが笑ってやればいいんだよ。笑ってやれるくらい、そういう人達を悔しがらせるくらい……楽しく創作してやろうよ。ねえ、みんな!
創作し、思い悩み、スランプに陥るのは苦しい。
それでも忘れてはいけない。何故、その苦しい道を自分で選んだのか。
全ては、それがやりたいと思った自分のためだ。自分だけの世界を体現するためだ。それが何より楽しいからだ。
誰かのために作るのではない。ランキングやら人気やらはあとからついてくるおまけのようなもの。アンチやら陰口やらはただの副産物。自分を本当に評価できるのは自分だけ。そこをけして履き違えてはならないのだ。
世界を作ることのできる“クリエーター”という“属性”は。アマチュアもプロも関係なく、それだけで他の人達より特をしていると私は思うのである。他の人にはできない、新たな世界の構築と楽しみ方ができる。人生を一分一秒単位で広げていけるのが、私達という存在なのだから。
“不器用だっていいんじゃない?
失敗したって構わないじゃない!
届けたい情熱に 素人も玄人もない
一生懸命でいいんだ
みっともなくてもブチ壊すんだ
頑張り続けたなら 変わる世界もあるさ”
描き続けることで、可能性の道は必ず繋がる。
今、悩んでいるあなたも、どうか思い出して欲しい。
何のためにあなたは、そこに世界を築くことを選んだのかを。
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