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故郷の村から見る山々は、山頂にいつも霧がかかっていた。
その峰の全容を見た者は少ないと言われている。村の年寄りがいつも話していた。
〝神様の山だからね〟
秋に霧の晴れを祈る村祭りがあった。鈴の音が空に響き渡る。
神様だとか、知らない。霧が晴れようが晴れまいが、私には関係ない。
ずっと靄が掛かったハッキリとしない姿が当たり前の山なんて。
神様なんて、いない。こんな村。
『ミハルちゃん、いい子だね。いい子だから、誰にも言ったら駄目だよ』
大きな手に視界を塞がれた、幼い日の記憶は、神楽の鈴の音に全部溶かした。
*
「いやっ、あっあ」
急所を刺激されてジュクッと淫液が噴き出す感覚があった。同時に躰が震える。
耳にフッと息が掛かった。
「噂通りだな。佐々木さん、言葉とカラダが連動してないのな」
耳元でクスクス笑う声に女を誘う妖しさが滲む。この人は、慣れている。
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