第一幕 四方をチェレステに囲まれたこの島で――――三宅島温泉

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   1. 「やぁ。やはり俺は自転車(バイク)で三宅島を周回するために生まれて来たのだと実感するね!」  ペダルを回す。  ギアを十一速(アウタートップ)に上げる。  下ハンドルを握って姿勢を低くすることで、向かい風をかわす。  三宅島(みやけじま)の外周をぐるりと覆った都道二十二号線を疾走する車体は、青天井の下で一筋の閃光と化していた。  車体――と言っても、自転車(チャリンコ)だ。  それも、速度のみをひたすら追求した『ロードバイク』と称される代物。  通常の自転車は横持ちのハンドルだが、走行時の空気抵抗が大きい。対してロードバイクはハンドルが縦持ちになっており、空気の壁をいなせる。さらに湾曲した下ハンドルを握ることで、空気をかいくぐる低姿勢にもなれる。  朝八時を過ぎた真夏(まなつ)の青空は、すでに陽射しが凄まじい。されどこの漕ぎ主は、熱波をものともせず爽快にペダルを踏み続けた。 「待って下さいよ~師匠!」  三宅島を走るロードバイクは二台あった。
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