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予定より30分遅れて、お店に着いた。当たり障りのない洋風居酒屋だ。先に始めるようにお願いしていたので、もう盛り上がっている頃かもしれない。
「すみません!遅れました、仕事が長引いてしまって」
「あ、藤沢くん。待ってたよー。仕事なら仕方ないよねー。今みんなの自己紹介が終わって、盛り上がり始めたところ」
そう説明してくれたのは今回の話を持ってきてくれたゆうこちゃんだ。
「藤沢、お疲れ!打ち合わせ長引いたみたいだな。けど、まだ飲み始めたばっかりだし、すぐに追いつけるぞ」
そう言ってくれたのが、先輩の田島さん。仕事でもプライベートでも仲良くさせてもらっている、頼り甲斐のある先輩だ。
「藤沢さん、チャーッス!」
とチャラそうに生ビールのジョッキを持ち上げたのが後輩の山崎。見た目はチャラいが、仕事はしっかりとする男で、会社では信頼されている。
「みなさん、遅れてすみません。えーっと、みなさんの自己紹介終わったようなので、僕、紹介させてください。田島さんと山崎と同じ会社で働いている藤沢っていいます。歳は30歳で、ゆうこちゃんとは学生の頃にバイトが同じで、それからずっと仲良くさせてもらってます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いしまーす」
と言ってくれたのはゆうこちゃんの友達だろう。年齢もオレやゆうこちゃんと同じ30歳くらいか。もう1人、明らかに年配に見える女性がおそらく問題ありの先輩だ。パッと見た感じ、詳細年齢はわからないが40歳くらいか。今日来ている先輩の田島さんが40歳なので、同じくらいだろうか。昔綺麗だったと言われればそう思えなくもないが、現時点での彼女の第一印象は、とても周囲を惹きつけるそれではなかった。というより、どちらかと言えば『オバさん』という印象の方がしっくりくる。なるほど、もしこの感じで『男はみんな私に夢中になるのよ』みたいなお考えをお持ちなら、確かに痛い。そして早速、オレの挨拶に対しては無視のようだ。
『私が来ているのに遅刻とはどういうこと?』
そんなところだろうか。早くも痛さの片鱗が垣間見える。これは、心してかかる必要があるかもしれない。
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