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ステージ裏で。
興奮冷めやらぬ萌え豚たちの声を背中に受けながらも、「ケンちゃん」こと西野はステージを後にした。
ステージの上に立っている間は可愛らしい笑顔を浮かべていたが、舞台袖にさがった瞬間に真顔になる。その顔は何の感情も読み取れない表情で、西野を知る者がいたら「あの西野が、真顔、だと・・・!」とか言って真剣に驚くくらいの真顔だった。
しかし、それも一瞬の出来事で今は蒸れた頭から熱気を逃すためにカツラをとって、カツラで頭を仰いでいた。団扇のように風邪は起こらず、全然涼しくはならなかったようでキレ良く舌打ちをした。
「ヤッベェ・・・・・・、めっちゃ汗かいたぜ」
「お疲れ様、西野。今のお前の頭は、ヅラを取って見事な玉ねぎになっているが何か狙ってるか?」
「うッせーな!! ただネットで髪をあげてる方が首元涼しいかと思ってそのままにしてるだけだわ!」
何故か舞台袖でライブの様子を見ていた香川から激励を受けたが、全然嬉しくない。香川は首にマフラータオルが巻いて、自分だけ団扇で涼みながら言ってきたからだ。
つまりは、今の西野が理想とする格好だった。普段であれば、「首にタオルを巻くとか農家のおっさんかよ!」とかイチャモンをつけるところだが、今はただ羨ましかった。
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