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西野は香川から団扇を強請ろうと無言で右手を前に出すが、香川には通じなかったようで顔をしかめられた。
「お前・・・、改めて見ると気持ち悪いな」
「てめーー何だよ! 表出ろよ!!」
「ここで言うと、表は「ステージ上」になるんじゃない? そんな玉ねぎ頭でステージ出たいわけ?」
「ないわー」と言いながら、冷たい目で香川は西野を見る。その瞳と相反するように彼の顔は赤く染まり、体感温度は暑くなるばかりだ。
「違うわ! その団扇を渡せって言ってんだよ。もしくは俺を扇げ」
「どっちもやだ、このうちわは俺のだもん」
「団扇くらい良いじゃん。心も身長も小さいなーお前」
「西野には言われたくない」
「何おう!!?」
火に油を注がれた西野は猿のように「ウキーーっ」と怒り、床を無意味に踏み付ける。香川は「また西野の癇癪が始まったな」と静観して、怒りが少し収まるのを待った。
その間も、香川は自分に団扇は扇ぎ続けた。
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