ステージ裏で。

2/16
前へ
/18ページ
次へ
 西野は香川から団扇を強請ろうと無言で右手を前に出すが、香川には通じなかったようで顔をしかめられた。 「お前・・・、改めて見ると気持ち悪いな」 「てめーー何だよ! 表出ろよ!!」 「ここで言うと、表は「ステージ上」になるんじゃない? そんな玉ねぎ頭でステージ出たいわけ?」  「ないわー」と言いながら、冷たい目で香川は西野を見る。その瞳と相反するように彼の顔は赤く染まり、体感温度は暑くなるばかりだ。 「違うわ! その団扇を渡せって言ってんだよ。もしくは俺を扇げ」 「どっちもやだ、このうちわは俺のだもん」 「団扇くらい良いじゃん。心も身長も小さいなーお前」 「西野には言われたくない」 「何おう!!?」  火に油を注がれた西野は猿のように「ウキーーっ」と怒り、床を無意味に踏み付ける。香川は「また西野の癇癪が始まったな」と静観して、怒りが少し収まるのを待った。  その間も、香川は自分に団扇は扇ぎ続けた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加