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一通り暴れてスッキリした西野は、ステージでライトを浴びてほてった体も冷めてきて団扇のことはどうでも良くなった。ただ、一瞬でも団扇を貸してくれなかった香川のことは恨むが。
いつか香川は雨の日に滑って水溜りに顔面を突っ込んだり、カエルが貼っついてくるみたいな、不幸なことに見舞われることを西野は願う。
「て言うかさ、何でお前はここにいるんだよ。関係者として普通にいるから、びっくりしたわ」
そう、西野はいつの間にか居たのだ。
俺が1時間以上掛けて顔面工事をしてる間に控え室に入っていて、終わって後ろを振り向いたら香川がいたんだよな。しかも、かりんちゃんと親し気に話しながら。
問い詰めたかったが、リハーサルだので忙しくて香川を問いただす時間もなく今まで来てしまった。だが、もう逃げられないぞ香川。
俺はすごく重要な秘密を暴いて問い詰める探偵のような気分になっていた。
「しかも、かりんちゃんと親しいみたいだし、何者なんだよ」
「あれ、言ってなかったっけ? 凛花は従姉妹なんだよ」
なんでもないかのようにさらりと言われたので、俺は言葉を咀嚼するのに時間がかかった。
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