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出会い
――わたしはもう、死んでしまってもいいでしょう?
陽炎と共にフラッシュバックする。
先輩の隣で佇んでいた、見知らぬ女学生のことを。
染めたばかりの仄かな茶髪、マスカラで縁取られた長い睫毛、一つだけ浮かぶ小さなえくぼ。
綺麗なスクールメイクをしている彼女は、どこまでも私とは正反対で。
晴れ渡った青空のような、そんな笑顔。
スポーツが得意な先輩にお似合いだと、誰もが口を揃えて祝福をしてもらえそうな人物だった。
初夏の風が吹く。
スカートがなびく。
散らばった自身の前髪を手で直しながら、彼女は楽し気に笑う。
半袖の制服に白い肌をさらけ出して。
無垢に、澄みやかに、微笑む。
そこに憂いはない。
私の心にあるような暗闇はない。
その幸せそうな光景を目にした瞬間に気が付いた。
私の淡い恋は、人魚が溶けた泡のように終わってしまったのだと。
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