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そんな出来事が、何度か起こった。
少女と明槻さんが出てくる夢を観た後には、必ず何かが起こっている。それは大体においてマイナスなことではなく、人をあっと言わせてしまうような素晴らしい事だ。
夢の内容は、様々だ。
例えば、可愛らしい喫茶店でデートをしている明槻さんと少女であったり。
クリスマスの街中、手編みのマフラーをもらって喜ぶ明槻さんだったり。
同じ布団に裸で無防備に眠る二人も見た。
代わりに起こったのは、例えばこんなこと。
体育のバレーボールで大活躍を決めてしまった。
知りもしない本の素晴らしい読書感想文を書いた。
クラスの中であったスピーチコンテストで優勝した。
家庭科の時間、気付けば自分では作れないような美味しいプリンができていた。
憂鬱だ。己に何が起こっているのか分からない。
分からないのだけど、町谷梨花のグループ以外の人間は、だんだん私を見る目が変わってきたような気がする。それがいいことなのか悪いことなのかは定かではないけれど。
「……どうしたの、そんなにふてくされて」
唯一の例外。
お昼休みの図書当番。カウンターで返却された本を読んでいた私に対してそんな声がかかる。振り返ると、そこには先輩が笑っていた。
決してイケメンとは云えないけれど、伸び盛りで陽向のオーラを強く持っている上級生。
「……別に、なんでもないのです」
「最近やけに活躍しているって噂で聞いたけど?」
私はその評価にムッとした。
うんざりと首を横に振る。
「そんなこと、ただの噂ですから!」
「へえ、うわさ、ね?」
先輩は意地悪そうな口調でからかってくる。――千尋宏鷹、陸上部の天才。本当だったら、苛められている私となんか親しくなるはずもない人。
どうして学校で孤立している私と仲良くしてくれるのだろう。聞いてはいけない問いかけが、いつも喉の奥で小骨のように引っかかる。
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