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「あー、疲れた。まったく、いつもいつも生活指導の先公が俺のことを苛めてくるんだよ」
「……そうですか」
気の利いた言葉の一つも返せない。
「俺としては、今時学校が終わるまでスマホなしとかありえないって思うわけ。まあ、暇つぶしに図書館に出入りしたおかげで八剣に知り合えたってのはあるけど、さ」
「先輩は、私に会えて何か得でもあったのですか」
可愛くない受け答えばかりが口をつく。さぞかし相手も嫌そうな顔をしているだろうと横を見ると、笑いをこらえている先輩がいた。
「人に会うのに損も得もないよ」
上っ面だけの響きっぽい。
憂いた私は浅く溜息をついた。
「疑わしいですが分かりました。それで、用事はそれだけですか……。先輩の本題はこちらの方でしょう」
「お、いつもありがとう八剣さん」
私は、学習用のパソコンの使用許可証をぶら下げて見せた。要は、先輩にとっての図書委員の私は堂々と学校でネットで遊ぶ為の縁……優先的にこの許可証を確保しておくためのコネ作りということだ。綺麗な笑顔になった先輩が真剣な横顔で名簿に氏名を書き込んでいる。
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