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嘆息して、赤い空を眺める。
グレーとオレンジに染まった雲が風に流れる様を見ていたら、今日のお昼頃に見てしまったあの光景を思い出す。
「千尋先輩」
あなたの残した輪郭なら、目を閉じてもこの指で描ける。
きっかけは些細なことだった。……今から思うと、原因なんてなかったのだろう。
自然と始まった仲間はずれを虐げるゲーム。人に馴染むことが苦手な私が偶然その対象に選ばれてしまっただけ。
だけど、その偶然って、どんなに酷なことなんだろう。
我が家の母は、どちらかというと娘に対してネグレクト気味。虐待気質を持っている彼女に相談できたことなんてなくて。
誰もが私から離れていく中、一人だけこっそり話しかけてくれた優しい先輩。内緒の時間、その存在にどんなに救われていたか知れない。
これまで彼に貰った一個の飴で明日を生きていた。
(……千尋先輩に彼女が、いただなんて)
もっと早く教えてくれれば良かったのに。
そうすれば、こんなに胸が押しつぶされて引き裂かれてしまうような痛みは感じずに済んだかもしれない。
あなたとの時間に依存する弱さを失くせたかも。
辛い。辛い。どうして、こんなに泣きそう。
生と死の境界線がゆらいだ。一歩踏み外してしまえば、いっそ楽になれるのかも。私の背後、駅の構内で電車が走り出す音が、嫌になるくらい全身に響く。
鬱だ。もう耐えられそうにない。
こんな世界壊れてしまえばいい。どうせ私は孤独だ。自殺したところで苦にもされないし、きっと葬式には誰も来ない。
むしろ、あの母のことだから葬式もあげてくれない。
テレビのニュースにさっと載って、それで痕跡が消えてしまうその程度の人生。乾ききった私の心がとうに限界だと叫んでいる。
《……こちらをみて》
聞き間違いだろうか、泣きそうな顔になっていた私の耳にそんな声が聞こえた。
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