第2章-1 隠していた事実

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第2章-1 隠していた事実

 恋人同士でも、夫婦でも、誰しもお互いに隠し事はあると思う。 それが大きなものか、小さなものかはさまざまだけれど、人間は生きていれば、その長さが長いほど、隠し事もあるのではないだろうか。  包み隠さず、何もかも知りうる事はできない。 そして、隠していた方が幸せなこともある。 それは自分にもわかる。  ある事が発覚したのは昨日の夜。 賢二が裕美の部屋で、裕美の作ったご飯を食べ終わった時に起こった。  記念日に好きな人と過ごせないジレンマ。 何か隠し事があるんじゃないかと不安になり、いつも我慢していた裕美が、耐えられなくなって、賢二を問い詰めた時だった。 「私は賢二と一緒に過ごしたいのに、なんで記念日に大事な日に会う事ができないの?本当の事言って!」 いつもはかわしている賢二も、遂に観念したように口を開く。 静まり返った空気。  賢二はどう話そうか考えている。 裕美はじっと賢二の口が開くのを待っている。 賢二は何か口に出そうとしてやめ、その繰り返しで言葉にならない。  たまらず裕美が、「正直に言って!」そう賢二に促す。 賢二が遂に重い口を開けた。 賢二が言った事は、俺にも衝撃的な事実だった。  賢二はバツイチで、一度結婚して離婚している。 そして、その女性との間に女の子の子供がいる。 だから、その日だけは子供に寂しい想いをさせない為に、祝ってあげたいみたいだ。  クリスマスはわかるけど、バレンタインデー、ホワイトデーは必要なのだろうか? そんな疑問がでて、二人の間に口を出してしまったけど、もちろん二人には、私の声は聞こえないのでスルーされてしまった。  俺の第六感が警告音を発している。
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