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やっぱり賢二はおかしい。
もっと大切な何かを、隠している気がする。
それは裕美に言えない事。
言ってはいけない事。
口に出して言ってしまえば、関係が壊れるような事。
そんな気さえした。
普通に考えてそんな大切なことは、つき合う前に言わなければいけないんじゃないだろうか?
完全に裕美を騙して付き合っていた事実に、無性に腹が立った。
裕美の心の優しさ、純粋さにつけ込むような真似をした賢二に強い憎悪を感じた。
この時から、俺の中で賢二の事が凄く嫌いになった。
そして俺の中で、信用のならない男としての烙印が押された。
賢二の言葉を聞いて、最初は驚いていた裕美も、「その日だけは子供に寂しい想いをさせない為に祝ってあげたい・・・その言葉にうたれたのか」
うん、わかった。記念日は子供のそばにいてあげて!もっと早く言ってくれればよかったのに。」そう言っていた。
裕美全然大丈夫じゃないくせに。
バツイチだった事、子供がいた事に、絶対ショックを受けているし、完全には受け入れられていないはずなのに、明るく振舞ってあまり相手を責めようとしない。
裕美そんな優しさなんていらない。
自分が傷つくだけだよ。
お前そんな強くないだろ?!
悔しいけれど、裕美は完全に賢二に惚れている。
賢二が帰った後、裕美はひどく落ち込んでいた。
さっきの明るさが嘘のように。リビングの隅に、ぽつりと小さくなって座り、両腕で膝を抱きしめるように、自分の膝をぼーっと見つめている。
すぐそばにいって寄り添った。
こういう時に、抱きしめてあげられない自分が情けなかった。
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