第1章 大切な人

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 あなたはもう人間じゃないけどね!っていうツッコミをありがとうございます。 裕美を見守り続けてもう3ヶ月近くになる。 この頃になると裕美もようやく元気を取り戻してきたようで少し安心した。  友達とご飯へ行ったり、仕事以外でも外出するようになり、笑顔も見られるようになった。  私のこの世界での身体は透明で、普通の人には見えないらしい。 そして歳もとらない。 なぜか裸ではなく、私が亡くなるときに着ていた服。 着ているというかついている感じだと思う。 そこは考えてくれているんだと思った。  もしかしたら考えてくれているんではなく、亡くなった時の状態のままなのだろうか? そう考えると、私が裸の状態で亡くなっていたら、裸だったという事だろうか? 誰にも見えないとしても裸には抵抗がある。 洋服を着ていてよかったと思う。  体温って言っていいのかわからないけど、一定で寒さも暑さも何も感じない。 だからもちろん風邪もひかない。 それに、三大欲求もあまり感じない。  食事もとらなくていいみたいで、お腹もすかない。 何もしないで家にいれば疲れる事もあまりなく、不思議と何日も眠らなくていいみたいで、 生きている時のような毎日の眠気はない。  ただ、裕美が夜寝てしまうとやる事がないので、自分も目をつぶって眠るようにしている。 眠るというより時間つぶしをしている。  瞑想している感じに近い気がする。 だから、生きていた頃のように、深い睡眠に入る事はなく、小さな物音で、裕美が起きた事はすぐわかる。凄く浅い睡眠状態なんだと思う。
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