第1章 大切な人

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 ただ、俺の声は聞こえないので、彼女には伝わっていない。 裕美は、派手ではないし、薄化粧だけど、綺麗な顔立ちをしている。 だから素材はいい。  自分がこうなってみて、冷静に裕美を見つめていると、とても綺麗な人と付き合っていたんだなぁと思う。 自分のことながら不思議な感じがした。 ふとしたえくぼと笑顔が眩しい。  あまり褒めると、元カノののろけだと言われてしまうけど・・・ サラサラのロングの黒髪で、洋服もおしゃれに着こなすので、この子は世の男性からモテるらしい。  いたって普通の俺は、改めてこんなモテる女性と長く付き合っていたのか、よくもまぁ、今まで他の男性にとられる心配をしてこなかったと思う。 なんていう自信。 この俺のどこにそんな魅力があったのかと、今自分自身にツッコミを入れている!  しばらく見守っていると、最近気になる人ができたみたいだ。 その人とよく電話をしているし、お互いの休みの日にはランチにでかけている。 私より年上で雰囲気は私に少し似ている。  いつもスーツを着ていて背は高く、短髪でメガネをかけている。 見た目は真面目そうで、誠実そうで、大人な雰囲気をまとった知的な男性に見えた。 俺はどちらかというと、子供っぽいところがあるから、 俺の後にこういう男性を選んだかもしれない。  今まで見てきた恋人候補者の中で、一番良さそうな気がする。 雰囲気が俺に似ているし、悪い人ではないだろうと思い、少し安心する。
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