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第1章 大切な人
俺はなぜまだこの世界にとどまっているのだろう?
俺の命はもうこの世界に残っていないはずなのに・・・
裕美への未練が、この世界に魂として居続けているのだろうか?
だとしても、俺が裕美にしてやれる事は何一つないのに・・・
今の俺は外の空気感を何も感じないけれど、周りにいる人たちを見ていると、
まだ寒い季節なのかもしれない。
この世界にいた時の感覚を思い出す。
肌がぴりつくけど、寒い季節が終わろうとしているのかもしれない。
この時期は、まだ夜は、風があり、寒さは残っているけど、昼間はじんわりと暖かさが浸透してくる。
そんな季節だろう。
「今日はいい天気だな。」
雲の切れ間から、光が漏れてきて、あたりを照らしている。
周りの人たちは、空を見上げ、手をかざし眩しそうにしている。
公園では、家族の仲睦ましい姿が見られる。
ママ友同士の会話で夢中になり、子供は子供同士で遊んでいる。
俺もいずれ裕美と結婚し、子供ができていたら、そしたらどんなに幸せだったんだろう母の喜ぶ姿が目に浮かぶようだった。
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