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「それじゃみちるちゃん。改めて確認させてもらうけど、キミの悩みは〝物がなくなる〟って事で間違いないかな?」
凛介が前もって話していたのだろう。
あたしとしては、それはとっくに諦めてしまった事であり、もはや悩みとして認識していないのだが――わざわざ訂正する必要も感じなかったので「はい」と頷くことにした。
「なくなった物があとになって見つかったことはある?」
「ありません」
「それはいつ頃から始まったのか覚えてる?」
「意識するようになったのは高校に入ってから、だったと思います」
「最近はどんな物がなくなった?」
「文房具とか、髪留めとか。ほかには上下セットで買った下着のブラだけがなくなってたり、あとはアクセサリーが……」
凛介から初めて貰ったプレゼントをアクセサリーの一言でごまかす。
そこに深い意味は、特にない。
「そして今朝は掛布団が消えた、と」
あたしが頷くと、あらかた聞きたいことは済んだのか、浦面さんは背もたれに深く身体を預けた。
その姿はどことなく推理を終えた探偵を連想させる。
そしてそれこそ探偵の如く「単刀直入に言おうか――」なんて前置きを挟んでから、袴姿の美女はあたしにこう言い放った。
「それは〝あやかし〟の仕業だよ」
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