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【本日の御予約】 紫乃原みちる 様 ④
「〝あやかし〟ですか……」
それなりの覚悟をして来たつもりだったけれど、いざこうして言葉にされると、やはり違和感が凄まじかった。あるいは胡散臭さと言い換えてもいいかもしれない。
自然、あたしの反応にも猜疑心が見え隠れする。
「信じてないって顔だね。まぁ無理もない。とりあえず順を追って説明しようか」
しかし、そんなあたしの猜疑心さえ『予定通り』と言いたげに、それこそ何度も同じ反応を見てきたような滑らかさで浦面さんは笑った。
こういったオカルトチックな話をすることに慣れているのだろう。
「ねぇ、みちるちゃんは〝あやかし〟って言葉からどんな存在を想像する?」
「えっ」――不意打ちの質問に表情筋が追い付かない。
「直感で良いよ。一番最初に頭に浮かんだモノを教えて」
「それじゃ……、化け猫……」
真顔のまま、絞り出すように昨日テレビで流れていた子供向けのアニメを思い出しながら答えると、浦面さんは「なるほどね」とクスクス笑った。
……恥ずかしさで頬が熱を帯びていく。
「うん、そういう存在も〝あやかし〟に違いないよ。人によっては河童を想像したり、イケメンの化け狐を想像したりするだろう。いわゆる〝妖怪〟と呼ばれる存在だね。――けどね、ここで私の言う〝あやかし〟は少し毛色が違うんだ」
似て非なるモノ。
浦面さんは、わざわざそう言い直す。
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