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「なになに、何の話で盛り上がってんの?」
そう声を掛けてきたのは、ようやく体を洗い終えた瀬尾大地だった。
研修の班こそ違うが、志望する部署と寝泊りする部屋が同じなので、風呂や食事を一緒にすることが多い人物である。
瀬尾への説明のために何の話だったかを思い出す。
「あーっと……。配属部署の話?」
告白する、させない。胸だ、尻だ。
そんなくだらない話だった気がするけれど、まぁ気にしない。
「特別報道隊の話? 心配しなくても虚蔵なら希望通りに配属されるでしょ。射撃はあんまり成績よくなかったけど、最近はかなり上達してるみたいだしさ」
「おかげさまでな」
「俺はなにもしてないよ。勢戸先輩のアドバイスのおかげでしょ」
「その勢戸を紹介してくれたのは瀬尾――ぶはっ!!」
虚蔵がそう返すと盛大な水しぶきが飛んできた。
どうやらヒートアップしすぎた下ネタ談義が取っ組み合いにまで発展したらしい。
「……元気だねぇ。この様子を指導員に見られたら、訓練がもう一時間くらい増えそうじゃない?」
顔にかかったお湯を拭いながら瀬尾が言う。
わずかに不機嫌な声音になっているような気がするが、この程度で腹を立てるヤツじゃないので問題ないだろう。
とはいえ、これ以上の実害を被るのは直人としても御免である。
「冗談じゃない。巻き添え食らう前に上がろうぜ」
「えー? まだ俺、五分も浸かってないんだけどなぁ。ま、いっか」
なんだかんだ言いながら一緒に行動してくれる瀬尾は根っからのイイ奴なのだろう。ヒートアップを続けるバカ共から逃げるように二人は夕食へ向かうことにした。
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