3・洋菓子みたいな恋をしたいと思ったんだ

10/10
428人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 ◆ ◆ ◆  それからほどなくして、加州さんは俺の家へ引越してきた。  職場は相変わらず、隣の塾。  縛りの達人とはキッパリ別れたから安心しろと加州さんは言う。  なんでも縛りの達人には奥さんも子供もいて、しつこく言い寄ってきたら、奥さんにばらすぞと脅せばいいから大丈夫なんだって。  俺は相変わらず四時に起きて、ケーキ作り。ぷらす、加州さんの朝食兼昼食も作る。  加州さんはお昼頃起きてきて、それを美味しそうにモリモリ食べ、「愛してるよ」とキスしてくれる。  とても幸せだ。  たまにフト思うんだ。  あの夜、見た風景。  あれは、もしかして、わざとだったのかなって。  俺に見せるために、元彼も協力してたのかなって。  でも、まぁいいかって思う。  だって、もしわざとなら、俺に意識してほしいから、やったことだもんね?  テキトーでふわふわしてる加州さん。  たまたま俺のことを好きになってくれたから良かったけど、この先はどうなるのかわからない。また、他に好きな男ができるかも? なんて考え出すと心配も止まらない。  だから、俺は今、密かに縛りの練習をしてる。  不器用だから、なかなか上達しないけど。  洋菓子みたいな恋に飽きた時には、加州さんを赤いロープで縛って、誰にも触らせないようにしちゃうつもり。  今はまだ甘い。  この時間を大事にしつつ。  そんな妄想をして楽しんでる。 第三話「洋菓子みたいな恋をしたいと思ったんだ」了
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!