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◆ ◆ ◆
それからほどなくして、加州さんは俺の家へ引越してきた。
職場は相変わらず、隣の塾。
縛りの達人とはキッパリ別れたから安心しろと加州さんは言う。
なんでも縛りの達人には奥さんも子供もいて、しつこく言い寄ってきたら、奥さんにばらすぞと脅せばいいから大丈夫なんだって。
俺は相変わらず四時に起きて、ケーキ作り。ぷらす、加州さんの朝食兼昼食も作る。
加州さんはお昼頃起きてきて、それを美味しそうにモリモリ食べ、「愛してるよ」とキスしてくれる。
とても幸せだ。
たまにフト思うんだ。
あの夜、見た風景。
あれは、もしかして、わざとだったのかなって。
俺に見せるために、元彼も協力してたのかなって。
でも、まぁいいかって思う。
だって、もしわざとなら、俺に意識してほしいから、やったことだもんね?
テキトーでふわふわしてる加州さん。
たまたま俺のことを好きになってくれたから良かったけど、この先はどうなるのかわからない。また、他に好きな男ができるかも? なんて考え出すと心配も止まらない。
だから、俺は今、密かに縛りの練習をしてる。
不器用だから、なかなか上達しないけど。
洋菓子みたいな恋に飽きた時には、加州さんを赤いロープで縛って、誰にも触らせないようにしちゃうつもり。
今はまだ甘い。
この時間を大事にしつつ。
そんな妄想をして楽しんでる。
第三話「洋菓子みたいな恋をしたいと思ったんだ」了
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