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1・洋菓子みたいな恋をしたんだ
その人はいつも、きっかり四時に現れる。
カラン……コロン。
ドアベルが柔らかく鳴った。
おかしいよね。お客は彼だけじゃない。なのに、その音で彼と分かる。
「いらっしゃいませ」
つい口調が、馴れ馴れしい感じになってしまう。
そんな自分に気付いて笑顔を引っ込める努力をした。
スラリとした体躯。長い脚。キリッとした眉。くっきり二重の力強い瞳。高くて綺麗な鼻梁。冷たくて圧の強そうなイケメンなのを裏切るような、ぽってりした柔らかそうな唇。
ダークブラウンの髪にスーツ。でも、ノーネクタイ。
A4サイズの機能性が高そうなビジネスバッグ。
そんな彼が目をキラキラさせ、ショーウインドウの中のスイーツを覗いている。
なにをしている人なんだろう。普通のサラリーマンには見えない。ホストっぽいとも言える。でもチャラチャラした雰囲気はない。肌ツヤもいいし、生活が乱れてるようにも見えない。
クールで落ち着いた……大人の男に見える。
「……季節のフルーツのロールケーキと、ダージリンティーで」
「ありがとうございます。お好きな席に掛けてお待ち下さい」
彼は壁際にあるいつもの席に座り、携帯を弄るでもなく窓から小さな庭を眺めた。
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