1 玲奈との電話

2/2
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「おめでとう良かったじゃーん! アサヒ、ちゃんと好きって言ってくれた? 付き合ってくださいって?」 「……………いや、好きとか付き合おうとかは言われてなくて」 「おまえら何してんだよおおおお」 「えっと、だ、大丈夫!」 「何が!?」 「冬はお客さん減るから、どこかで一度、まとまった休みが欲しいって。アサヒが働き先の民宿の従弟さんに交渉したの」 「へぇー……???」 何がどう大丈夫か、さーっぱりわからん。 玲奈とアサヒが互いに好き合っているのはわかる。 というか高校の頃から、本人たちはどう思っていようと、この子たちのグダグダっぷりは周知の事実だ。 しかしだ。 今、大事なのは、結局きみらは、ちゃんと付き合ってるの? ねえ、その辺マジでどうなの? あのさあ、と切り出す前に、玲奈が嬉しそうに話を続けた。 「こっちで遊べる時間作ってくれたんだ。従弟の知り合いの家に泊めて貰えそうって。とりあえず、遊ぶ日は決めたし。わたしもさ、ちゃんとアサヒにぎゅってしたし」 スマホから延々と続く玲奈の「大丈夫」を聞くうちに、こいつの「大丈夫」はある意味大丈夫なんだろうけれど、違う意味で全くもって大丈夫じゃないやつだった、と改めて思い知らされた気になった。 * 「──っていう電話があったんだけど。いろは、あいつらどう思う?」 「これは最早、案件ね」 スマホの向こうで、涼しげないろはの声が響いた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!