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4 サイゼリヤの中で
願い虚しくというか、何というか。
サイゼリヤの店舗の中で、私達は予想通りアサヒを見つけた。
窓際の席に座っている長い手足の持ち主の男の子。ぼんやりと外を眺めている。
日に焼けて、少し……えっと
「あいつ、見た目エロくなったわね」
「……いろはさん!?」
「良い肉の付き方してるわ。きちんと働いてんのね」
おかあさん? と言いかけてやめた。どう考えても怒られるやつだ。
店員に案内されて席につく。
ソファ席とガラスのパーティションを一列挟んで限りなくアサヒに近い席をゲットした。
パーティションの向こうには、アサヒの頭が小さく見切れている。
いろはは席に着くなり、店員にドリンクバーだけを注文した。決断が速い。
私もいろはにならってドリンクバーだけを頼む。
店員が去った。
いろはが玩具の矢をテーブルに置いた。
そんなものしまっときなさい、と言う勇気はない。誰も私を責められないはずだ。
いろはは続けてスマホを取り出した。画面を叩いて何かをチェックしている。
「よし。玲奈一時間前にSNSで呟いてる。もうそろそろ着くんじゃない?」
「いろはってそういうとこあるよね」
「あら、なあに?」
「あーっと、私、コーラ入れてこよっかなぁ。いろはの分も何か淹れてきてあげようか?」
笑顔で押し切る。立ち上がろうとしたその時だった。
──ぴんぽーん。
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