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間の抜けたベルの音が響いた。
一人の店員がいそいそと動き出す。自然と目で追ってしまう。
その店員の明るい笑顔を目にした瞬間、わたしはテーブルのベルを鳴らしていた。
ぴんぽおおおおおん!
「いろは、見て、玲奈!」
「え、何!?」
いろはが慌てて辺りを見回した。
「どこよ?」
「あれ! あの制服の子」
「──え……? え!? 何で玲奈が店員を!? 聞いてないわよ!」
「いや、玲奈だってさ、何でもかんでもあんたに報告する義務はないでしょうよ」
思わず冷静につっこんでしまった。
いろはが机に突っ伏す。
「わかってるけど! でもっ、でもっ!」
「あーよしよし。あんた、玲奈のこと好きだもんねぇ」
「──お待たせいたしました」
「え?」
あらぬ方向から話しかけられ、私はきょとんと振り返った。
テーブルの側に突如出現した店員と目が合う。
店員が、え? と呟いた。店員の視線が虚空をさ迷う。
店の壁際、小さな電子パネルには、真っ赤な番号がいくつか光っている。
そうだ、押したんだった。心が高ぶるままに。
「えーっと、ティラミスを一つ」
咄嗟に、目に入ったポップのデザートを注文する。
店員がやんわりとした笑顔で注文を受け付けてくれた。感じよく去っていく。
「ほら、いろは、ティラミス注文したよ。甘いものでも食べて、元気出そう」
「ううっ……あ、玲奈移動したっ」
ピンポォーン!
いろはの手がベルを鳴らす。
同じ電子音のはずなのに、どこか空気を切り裂くような音に聞こえたのはわたしだけでしょうか。
完全に我を忘れたいろはが、小声で、「玲奈、こっち!」と囁いた。どうしよう。他人になりたい。まあ、元々他人だけど。
玲奈が気づいた。
驚いた表情で近づいてくる。
「お待たせいたしました……え、ていうか、びっくりした、今から二人で遊びいくんだ?」
いろはがふるふると首をふる。
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