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1 玲奈との電話
お前らいい加減つきあっちゃえよ、と高校時代から周囲をそわそわさせ、
高校卒業間近、「アサヒとは四年後に付き合う事になった」とかいう訳の分からない約束を交わして離れ、
大学へ入学して三ヵ月と経たずに「アサヒ、今宮古島で働いてるでしょ。四年経つまでに見知らぬ女に寝取られるかも」と落ち込んだ挙句、
アサヒから連絡が来た瞬間、島へ単身渡ったかと思えば一瞬で帰ってきた玲奈から電話があった。
私、永井天音が、高校時代から友人をやっている川田玲奈の、ここ数年の恋愛事情をまとめるとそんな感じだ。
とりあえず、ねぎらいの言葉をかけてみる。
「お疲れさま。で、相手の女、どんなやつだったー?」
「……え、別に、会わなかったよ?」
「──ん?」
季節は十月。
のんびりした土曜の午後。
わたしはベッドの上で寝返りを打った。
先日、玲奈が大学の授業を放り出して教室を飛び出していった。一体、何が起きたのかと焦った。ラインした結果、「アサヒから連絡あったから宮古島行ってくる」というド直球な返事がきた。
そうか。出陣か。ついに来るべき時がきたか。
なんて思っていたのに。
なんだこいつは。
「あんた、時間と金かけて、はるばる宮古島まで何しに行ったのよ??」
「アサヒにキーホルダーを渡しに……」
「はあん!?」
意味分からん。
「で? 結局、どうなったの」
「ん、とね。えへへ。ぎゅってしてもらえた」
スマホから漂うシフォンピンクの声に、あれこれやきもきした事なんか、一瞬でどうでもよくなった。
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