1 玲奈との電話

1/2
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

1 玲奈との電話

お前らいい加減つきあっちゃえよ、と高校時代から周囲をそわそわさせ、 高校卒業間近、「アサヒとは四年後に付き合う事になった」とかいう訳の分からない約束を交わして離れ、 大学へ入学して三ヵ月と経たずに「アサヒ、今宮古島で働いてるでしょ。四年経つまでに見知らぬ女に寝取られるかも」と落ち込んだ挙句、 アサヒから連絡が来た瞬間、島へ単身渡ったかと思えば一瞬で帰ってきた玲奈(れな)から電話があった。 私、永井(ながい)天音(あまね)が、高校時代から友人をやっている川田(かわた)玲奈(れな)の、ここ数年の恋愛事情をまとめるとそんな感じだ。 とりあえず、ねぎらいの言葉をかけてみる。 「お疲れさま。で、相手の女、どんなやつだったー?」 「……え、別に、会わなかったよ?」 「──ん?」 季節は十月。 のんびりした土曜の午後。 わたしはベッドの上で寝返りを打った。 先日、玲奈が大学の授業を放り出して教室を飛び出していった。一体、何が起きたのかと焦った。ラインした結果、「アサヒから連絡あったから宮古島行ってくる」というド直球な返事がきた。 そうか。出陣か。ついに来るべき時がきたか。 なんて思っていたのに。 なんだこいつは。 「あんた、時間と金かけて、はるばる宮古島まで何しに行ったのよ??」 「アサヒにキーホルダーを渡しに……」 「はあん!?」 意味分からん。 「で? 結局、どうなったの」 「ん、とね。えへへ。ぎゅってしてもらえた」  スマホから漂うシフォンピンクの声に、あれこれやきもきした事なんか、一瞬でどうでもよくなった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!