1 空を飛べたら

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1 空を飛べたら

ある村の質素な木造教会に天使が舞い降りた。天使は神の伝言を話した。 「神は天使を探しています。この村人は新人深く、良いお心をお持ちの者がおります」 男なのか女なのか。若いのか年寄りなのか。それが分からぬ美しい天使は無表情で神父に天使になる者の条件を伝えて消えた。これに村人が集まってきた。 「火にも燃えず、冷たい水の中でも凍らず。空を飛べる者、という事だ」 この条件を聞いた者は途端に諦めたが、若者で挑戦する者がいた。 そんな中に若い娘のニケもいた。ニケは幼馴染みのイカロスに相談した。 「ねえ。どうにかならないの」 「止めておきなよ」 美しいニケは天使を見て、永遠の美しさに魅了されていた。農民のイカロスは山仕事で怪我をしひどい傷が顔にある醜い男だった。ニケはイカロスに知恵を出せと言った。 「私は天使になって永遠の命が欲しいの」 「今のままで十分幸せじゃないか」 「いやよ。こんな田舎の村で一生を終えるなんて」 わがままであるが愛しい彼女のためにイカロスは支度をした。 火の中でも歩けるような木靴を作った彼は、自ら火を起こし、上を歩き何度も試していた。この木靴を濡らしていけばニケでも歩けるように完成させた。 冷たい水の中。ここを華奢なニケでも過ごせるようにイカロスは体に油を塗り、ぶどう酒を飲んで試してみた。そしてちょうど良い油を見つけてやった。 そして空を飛ぶために白鳥の羽を集めた。蝋で固めて腕にはめる鳥の腕を作ってやった。 やがて天使の約束の日がやってきた。
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