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七瀬玲さんはついさっきまで、有名な落語「千早ぶる」を披露して拍手喝采だった。
百人一首で有名な、在原業平の歌をネタにした噺だ。
「千早ぶる神代もきかず龍田川からくれないに水くくるとは」
この和歌の意味を娘から教えてと頼まれた金さん、物知りのご隠居に訊いてみようと出かけるが、ご隠居も知らないのでいい加減な歌釈になるというのがこの噺の味噌。
「──井戸へ落れば、水をくぐるじゃねえか──最後の『とは』てぇのは?──お前もしつこい奴だな。そのぐらい負けておけ──負けられませんぅっ?──後でとっくりと調べたら千早の本名だった、おあとがよろしいようで」
わたしには何度聴いても楽しい落語だ。
短歌も詠むわたしには、短歌が題材の落語というだけで嬉しい。
どちらが好きかと問われれば万葉集の素朴な見たままありのままが好き。でも、百人一首の雅やかな世界も悪くない。
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