第一章 赤い花の平原

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第一章 赤い花の平原

 昨日も今日も、赤い花の上でグルーは暮らしている。呪われた草原と周りのひとは言う、かつてズームグと呼ばれた国の王都跡を望む赤い花の平原だ。病の人の呪いに満ち、彼らの亡霊が、健康な者を妬み、泥の中に引き込むことで知られる泥地である。  だが、そんな恐ろしい沼地でありながら、そこはどんな季節も赤い花の絨毯で埋め尽くされ、この世のものと思えぬ美しさであった。だが、その絨毯の上だけがグルーの生活の場であり、昼は青空を見上げ、夜となれば遠い星空に照らされる場だった。  グルーがこの平原に来たばかりの頃は、同じような病の仲間がこの平原には住んでいた。だが、病が進み、患者はまたひとり、またひとりとグルーの前で亡くなっていった。  気が付けばグルーはひとりぼっちになっていた。だが、グルーはこの赤い花の平原の生活が気に入っていた。ひとりはたしかに孤独であったけれど、その時は、同じ病で命を落とし地中に眠る亡霊たちの歌と戯れた。怖くはなかった。  なぜなら、いつか自分もそこに行き、彼らの仲間になるのが自分の運命と知っていたから。
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