第二章 隻眼のグルー

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 こうして、ガザリア軍との小競り合いを繰り返しながらも、グルーたちは勢力を伸ばし、気が付けば、テセの国境近くにまでたどり着いていた。 「我々の国を作るのだ!病の者たちの為の国を!!」  グルーが一団にそう叫ぶ。  途端におおーっ!という歓声が異形の群れからあがる。 「我々の国を!」 「我々を虐げし者に死を!」  地を埋める患者たちは、青黒い膿の体を、顔を陽の光にさらしながら、大声で呼応した。グルーの一団の勢いは収まる気配を見せなかった。 「グルーが来たぞ!」 「隻眼のグルー、死神が来たぞ!!」  対して、相対する者は、恐れをなしてそう叫ぶ。  グルーは首領となりながらも、戦闘から身を引くことは無く、常に襲撃の先陣を切るのはやめなかった。  それゆえ、いつしか、グルーは、病の者たちには熱狂的に英雄とあがめられ、そうでないものには、死神と恐れられる存在になっていた。短剣をかざさずとも、グルーを見た者は、その青黒い膿に覆われた右目を見ただけで死を連想したのだ。  しかし、いつしか、やがてその一団にも深刻な影が落ちる。
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