第二章 隻眼のグルー

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 患者たちが集まれば集まるほど、そして時間が経てば経つほど、その途上で病によって命を落とす者も増加してきたのである。  それは一団の存亡に関わる死活問題であった。 「我々には薬が必要だ」  ある日の軍議でグルーはそう口火を切った。 「それも一刻も早くだ。国を作る前に皆が命を落としては敵わん」 「…だが、グルー、疫病の薬はそう容易には手に入らぬぞ。かつて薬草を保持していたテセの都が燃えてからもう20年。あれから薬を作る手段は失せ、テセもガザリアの属国に成り下がっておる」 「それは知っている」  腹心の部下の言にすこし苛ついたようにグルーは銀髪を揺らした。しかしそれを必要以上に露わにするグルーでは無い。  
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