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第三章 巡りあう
「こんなはずでは…」
グルーは呻いた。
手に負った傷からは絶えず血が流れている。意識が朦朧としてくる。グルーは気力をふり絞って、腹心の部下たちの名を叫んだ。
「カーサ!ガルムド!サラーン!ヨヘド!……!生きてるか?いたら返事をしろ!!」
だがその声に応える者はいない。
ただ風が吹き、砂塵がばあーっとグルーの傷ついた体にまとわりつくのみだ。
「皆死んだか……ガザリアの奴らめ……」
テセとの国境に配置されたガザリア軍の作戦は巧妙だった。グルーたちが動き出す前夜のうちに、野営をする一団へ、病の者を装った数人の精鋭を忍び込ませ、朝が来る前にグルーの一団を襲ったのだ。
さらに、混乱するグルーたちの一団へ、ひそかに周りを囲んでいたガザリア軍の本隊が攻め込んだ。攻撃は一方的なものとなり、悲鳴・怒号……修羅場と化したグルーの野営地は病の者のうめき声で満ちあふれた。倒れ込む患者たちの上に更にガザリア兵の剣がひらめく。
野原は病の者たちの血で赤く染まった。
夜襲に気づいて必死に戦ったのはグルーも同じであった。いつものように地位を顧みず、病の者の群れの中で、獅子奮迅するグルーの姿があった。
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