9人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、銀髪を振り乱し、隻眼をらんらんと怒らせて短剣でガザリア兵に戦いを挑むグルーの姿は、否が応にもガザリア兵の目についた。
ガザリア軍にとっては、グルーこそが標的であったからだ。
「他の者はほっておけ、首謀者グルーを捕らえよ!」
ガザリア軍の将校から途端にそう指示が飛び、グルーはあっという間に囲まれた。間一髪のところで、グルーの腹心たちが駆けつけ、その輪の中へと切り込んだ。たちまちグルーの周りは大混戦となり、もはやだれが味方で敵か分からぬほどだった。
「グルー、逃げろ!ここは俺たちに任せて逃げろ!」
誰かがそう叫んだ。
「グルー、お前がいれば病の者たちのこの一団は再建できる、だから逃げるんだ、国を作るんだ!」
刃と刃がぶつかる中でグルーは何度もその声を聞いた。
「逃げるんだ!グルー……」
そう言って事切れた声を足下で捉え、グルーははっと下を向いた。腹心、それも昔からの仲の仲間がグルーの盾となったまま、血にまみれ崩れていた。
最初のコメントを投稿しよう!