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グルーは観念した。逃げるのは性に合わぬ、だが、いまはこの場を逃れなければ何もかもが終わってしまう。グルーは不承不承それを悟ると、戦場を脱出する決意をした。
が、それも容易ではなかった。何人ガザリア兵を斬ったかも分からぬ混乱のなか、グルーは必死に退路を探り、走った。力の限り走りに走り、そしていつのまにか、独りになっていた。
「畜生、こんなはずでは……」
砂塵の中からは、いまだグルーを追うガザリア兵の声が微かに聞える。グルーの体力も限界が近づいていた。
……どこかに身を隠せなければ……。
グルーは光ある片目で必至に周りを見回した。すると、もとは軍の詰め所だったらしい古びた建物……というか廃墟が眼に入った。グルーは震える体でそのなかに這いずりこみ身を隠す。
だがガザリア軍の声は次第に近づいてくる。
ここまでか、とグルーは思った。同時に、捕まるのは恥だという気持ちがグルーの中で高まる。なら、ここで自害して果ててしまおうか。俺を守って倒れていった仲間に申し訳はつかぬが、こんな人生の終わり方が俺にはふさわしいのかも知れぬ……。
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