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事態が飲み込めないグルーは、まだ自由に動かせない身を動かして、状況を探るのに必死だ。それをメリエラがそっと手を差し伸べ制する。カロはそれを静かな眼差しで見つめると、再びグルーに向かいあう。
すると壮年の男性が口を開いた。
「それは余から言おう。グルー、私はテセの王、セヲォンだ。ただ王と言っても、今やテセの実権を握っているのはガザリアだ。余は権力をガザリアに引き渡し、この館に隠居……いや軟禁の身だ。このカロは余の監視役も同じなのだよ。だがいいこともある。国の実験を渡した引き換えに、この館は余の自由、ガザリアの権力は及ばない。治外法権とは、そういうことだ」
「お前がテセの王だと……?」
「そうだ、地に墜ちた王だがな」
グルーは2人の男の意外な正体に驚きを隠せない。だがテセの王、と聞いて、問いたださずにはいられないのは薬草のことだ。勢い込んでグルーは体の痛みも忘れ、叫んだ。
「病を癒やす薬草は……テセの何処にある?!」
「薬草はすでに絶えた」
セヲォンは重大なことをさらっと言う。
「なに……!嘘をつけ、隠しているのではなかろうな?!」
「隠してなどいない。なぜなら……」
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